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『たゆまう糸を紡ぎ給う導』:3

『たゆまう糸を紡ぎ給う導』:3。

以下タイトルリンクよりどぞ。

■ ■ ■


『たゆまう糸を紡ぎ給う導』:3。


■ ■ ■





「・・歩きにくい」

不満そうに文句を並べているのは晶で、しかし隣を歩く男は愉快そうに笑う。
場所はいつの間にか繁華街や高級ショップ街を離れ、人寂しい一角を並んで歩いている。
周りの景色も変わってきており、イルミネーションでも施せばロマンティックな演出を期待できそうな樹木のアーチをくぐる。このままもう少し歩けば、大きな公園に合流するだろう。

「そういった靴は初めてかね?よく似合っているが」
「そういう問題じゃねぇよ。こんな靴で戦闘に対応できねぇだろ」
標準価値からして相変わらずの晶だ。
「第一、排水溝とかでつまづきそうだし」

くるりと踵をあげる仕草をしてやれば、どうにもその違和感がご不満らしい。
律儀なウーマンが履くようなヒールではなかれど、カジュアル重視の膝までのブーツだ。しかし、その踵を無理矢理持ち上げたような尖った先端が気に入らないようだ。

「俺との背丈の差は幾分か縮まったがね」
「だーかーらー!」
「ああ、失敬。それが目的ではないがね」
「今日お前に付き合ってるのだってな、俺は市井の見回りだって聞いたから来たんだぞ!?」
「経済状態を把握し観察するのも充分見回りに値するのだがね」
「お前の行動は、ただのショッピングにしか見えねーんだよっ!」
「まぁ、それも正解だろうな」

何を言ってもこの調子だ。
文句を言えば否定するでもなし、不満を並べ立てても正面から悟らされるでもない。
水のようにかわしたかと思いきや、己の行動を全て認めているのだ。
何が言いたいのか、何がしたいというのか。

晶に理解できたはずもない。

「・・・もういい、疲れた」
「休憩でもするかね?」
「そういう意味じゃねぇよ。分かって言ってるだろ」
「まぁね」
「そういうのが疲れてるって言ってんのも、分かってんだろ」
「ふむ、正面から認めるのもどうかと思うが」
「計画犯め・・・!!」
「せめて知略と讃えてほしいものだが」
「だ――――ッ!!もう黙れッ!!」
「君がキスしてくれたら」
「誰がするかぁっ!!空気を読めっ!」
「それは寂しい事を言ってくれる」

息切れ混じりの晶の肩を軽く倒せば、背後の大きな幹にぶつかる。
そしてそれを逃がすでもなく、桐弥の両腕が晶を囲んだ。

「・・・だろう?翼の君」

しまった、と自覚するには遅すぎた展開。
己を戒めてみても、後悔だけが先立つ。

いつもの事だ。
慣れすぎて追いつかなかったのだ。

それとも、それすら利用してくれたとでもいうのか。

「ちょ、桐――――」

顎を軽く持ち上げられ、その先によく見知った男の表情が映り込む。
避けようと思えばそうできる筈だというのに、何故か視線を逸らせない。
幹に食い込ませた自分の指先で拒絶する、という行動の選択すら選択肢に入り込まない。

赤い両目。
透き通るように綺麗な、その瞳の輝き。
吸い込まれそうになる程、透明感を熟している。

いつも見てきた、この両目。
いつも、そこには自分が映りこんでいる。

「キスをする時は瞳を閉じるものだが?」

俺は許可した覚えはない――――そう叫びたくとも、何故か反論できない威圧感。
いや、威圧感というのは正しくないだろう。
言葉を封じられた魔力にも似ている。
これが蒼史郎ならば、陰陽師の術だと判断できそうなものだが――――彼は、桐弥は言葉の魔力で人を束縛できるような魔術師ではない。それはどちらかといえば、陰陽師の役割だからだ。

「待、て・・って…」
「たまには独り占めしても良かろう?」

何を言っているのだろう――――そう表情だけで訊ねれば、それを察知したのか歯痒そうでいて微笑む表情が用意された。

至近距離のまま。
唇が触れるか触れないかの距離を保ったまま。

「稀代の天才魔術師と謳われる俺の唯一の弱点は君なのでな。弱点克服しようと心がけたつもりだが、無理だったらしい」
「なん、だよ…それ…傲慢、野郎…」
「君が可愛いのがいけないのだと、言っている」

そんな無茶苦茶な責任転嫁など、聞いた事がない。

この男は、どこまで傲慢なのだろうか。
この男は、どうしてこうも押し付ける真似ばかりするのだろうか。


「君も、俺に酔い浸りたまえ」
「…は、誰が…してやる、かよ…」

微かな呼吸のリズムですら、唇にかかる。
この煩わしい感覚が邪魔で仕方ない。

するならさっさとしろと。
さっさと終わらせろと。

しかし、男はそれを知っていて分かっていて、この距離を保っているのだろう。

■ ■ ■


更に続く。

きわどい?(笑)きわきわ。(造語するな)

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