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『たゆまう糸を紡ぎ給う導』:4

桐弥×晶、SSの続き。

きわきわ。


■ ■ ■


『たゆまう糸を紡ぎ給う導』:4


■ ■ ■



未だに慣れる事のない、押し付けられる緊張感。

唇が触れ合うまで数ミリと云った所だろう。

だが、それすらも楽しんでいるかのように、男はじわりじわりと角度を変えては―――しかし決して触れようとはしない。

会話はなかった。
ただ、二人の僅かな間を通り抜けていく季節独特の風が迷い込んでくる程度にすぎない。

しかし晶は、それに苛立つよりも先に襲われる感覚にあった。
例えるならば、望んでいない生殺し感覚―――だろうか。
表現として正解ではないが、多分一番近い。

「翼の君」
「な、なん、だよ…ッ」

こんなにも至近距離ではさすがの晶も逸らしてしまうのだろう。
理解のできない動悸を自覚しながらも、口だけは尖ってみせた。
しかし男は、桐弥は、からかう笑みを見せるでもなく、ただ結論を述べる。

「キスするが?」



…『するが』??

なんだそれはッッ!!!
その後の言葉は何だ!!!


「キスする。キスしたい。キスしてみせよう」
「サ行三段活用のつもりかッッ!?」
「トリプル活用、という言語があれば、今の俺の心中に近いのだがね」
「桐弥ッ、お前なぁッッ!!」
「―――黙りたまえ」

そして、いつになく真剣に細く赤い瞳で制止させられていく。

瞼を伏せるように切なく赤い瞳。
時折、見せられるこの表情。
角度だと言えばそれまでだが。

晶の怒号に対し叫びで対応するのではなく、いつだってこのように静かすぎる声が晶を留めさせる。

呟くよりも低い声で。
囁くよりもはっきりした声で。


「…黙って、俺の事を考えたまえ」


そして、子供以上の要求をされる。

そんな事できる筈がないと知っている癖に、まるで妄想を要求するかのように提示だけしてみせる男。


「拒む気がないのなら、黙って俺に委ねておきたまえ」


そう、桐弥は晶に『拒む』事ができないのだと知っている。
それは好きだとか受け入れているだとかいう正当な理由ではなく、晶にその理由がないせいで生じている。
拒む事許されず、受け入れる事適わず――――そうういった生き方を続けている晶だからこそ、『理由』がないのだ。

それは晶にとっては今更であるし、桐弥にとっては理解した上での承知だろう。

だからこそ、いつもこの行為はキスという恋愛事を真似た行為は―――普段の追いかけっこと何ら変わりはなかった。

桐弥が一方的に表現する方法でしかない。
無言で堪えるだけの時間が僅かに増えるだけの晶でしかない。

「…黙ってやるけど、後で殴る」

そして、いつも口だけは喧嘩腰だ。
多少なりとも緊張に似た何かを味わっている今の表情と合致していない事に本人は気づいているのか。
それを教えてやらないのは、桐弥の傲慢なのか。

「するなら、さっさとしろ」
「それは、誘っているのかね?随分と萎えるセリフだが」

顎を引き上げ、至近距離に逸らせない視線の中で―――晶が何かを伝えようとする。
しかしそれは言葉に変換できないようで、多少悔しがっていた。
大方、この焦らされる感覚に距離に対しての文句だろう。


■ ■ ■



きわきわ。
続く。(まだ続くのか)

あ、まだキスしてないですよ。
桐弥は、落ち着かない感覚の晶を楽しんでます。

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